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リターン(分子)の算定


利益÷費用≠ROI?

 一般的にROIは、「利益÷費用」で定義されます。確かにROIはReturn on Investmentなので、利益をリターン、費用をインベストメントと考えれば一見問題ないように見えます。しかし広告の場合は、単に出稿後の利益を出稿費用で割ってもそれはあくまで「その時点における利益÷費用」という値であって、広告のROIにはなりません。

 また、POSデータなどで時系列の売上集計データがある場合に、ベースライン(何もマーケティング施策を打たなかった場合でも発生するであろう売上)と、広告やプロモーションを行った後の売上を比べて、どれ位売上や利益が増えたかを見るタイプの分析がありますが、このリターンは「プロモーションリフト」と呼ばれるもので、ROIで考えるリターンとは別です(※1)

 これらが広告のROIとならない理由は、「出稿後の利益は、当該広告と必ずしも紐付いていないから」です。そしてこの事が広告の効果測定、ひいては広告のROI算出というテーマが難しいと言われる一因となっています。

※1 ただし、山積み陳列など店頭でのシングルプロモーションについては、需要の先喰い、共喰い、先延ばしの影響が少ないと判断できる場合、プロモーションリフトとプロモーションにかかったコストで費用対効果を算出する事は妥当といえます。


広告効果算出の難しさ

 広告効果測定の調査でよく用いられる仕様に、事前事後評価という方法があります。簡単に言えば広告との接触前後で製品やサービスの購買意向を測定して、接触後の方が高ければ効果があった、と判定するロジックのものです。

例)広告の事前事後評価のパターン
・出稿期間の前と後で、そのブランドに対する認知度や購買意向に差があるかを見る
・コンセプトやパッケージ、クリエイテイブ案を見せる前と後で差があるかを見る
・広告に接触した人と接触してない人にデータを分けて、群間で差があるかを見る


 例えばあるメーカーが新製品発売に合わせてクロスメディアを使ったプロモーションを打ち、事前調査での製品購買意向は全体の20%、事後調査で広告接触群の購買意向は25%だった、としましょう。ここでFactとして認められるのは「購買意向が5%上昇した」という事だけです。プロモーションの効果で5%上昇した、とは言いきれません(※2)

 何故なら当該プロモーション以外にもその上昇分の原因は考えられるからです。当該広告以前に打った広告やプロモーションの効果が遅延して発生したのかもしれません。もっと昔から積み上げてきたブランドとしての信頼感や知名度のおかげかもしれません。あるいは価格設定が良かった、流通量が多かったからかもしれません。季節的に需要が高まる時期だったのかもしれませんし、たまたま競合のプロモーションが少なかったからかもしれません。

※2 事前事後調査を実験室環境(CLTの様な閉じられた空間を用意して、測定結果に他の要因の影響を混入させない環境)で行えば問題ないという考え方もあります。しかし、実験室で広告やクリエイティブを見せる事は注視状態での評価になります。現実生活の中で消費者が広告やクリエイティブに接する際は、低注意状態です。実験室で注視している時には差が出ても、現実生活で接触した時は有意な効果が出ない、という事は十分に起こりえます。


広告によるリターン算定の原則

 ある広告媒体のROIを算出するには、原則として、総リターンの内、純粋にその広告媒体に由来するリターンを算定する必要があります。つまり、測定しようとしている広告媒体の純粋な寄与(効果)によって生じた増分額です。上の新製品プロモーションの例でROIを求めるなら、今回のクロスメディアプロモーションにのみ由来する増分リターンを算出し、更にそれをクロスメディアに用いた媒体ごとに適切に割り振らなければいけません。
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広告媒体に由来するリターンの算定


 要点をまとめると、リターンの算定においてポイントとなるのは「1. 広告寄与の算出」と「2. 広告効果の分解」の2つです。「広告寄与の算出」とは、広告とそれ以外の要因による寄与をどう切り分けるのかという問題、「広告効果の分解」とは複数の媒体の効果をどう個別の媒体へ切り分け割り振るのか、という問題です。この2つは広告効果測定の山場であり、広告ROI算出においても必ず突き当たる問題です。

→広告寄与の算出(2月下旬公開)
→広告効果の分解(3月上旬公開)

 ROI+では、「広告寄与の算出」と「広告効果の分解」を同時に行い、広告媒体のリターンを推定するシミュレーションアルゴリズムを開発しています。それを基に、ROI+ソリューションをご利用のクライアントの商材、ターゲット、使用媒体に合わせて弊社のモデラーが解析を行い、ROIを計算していきます。