広告ROIの算出に取り組む時、まず最初に行う事は以下の2点を明確にする事です。
・広告の「ターゲット」を明確にする
・広告の「ゴール」を明確にする
通常の広告効果測定でも同じですが、広告のROIを算出するにもまず「誰に対してのROIなのか」という”主語”を定める必要があります。主語を定めないと誰からデータを収集し、誰に対するROIを計算すればよいのか定まりません。そして、ROIの分子となるリターンを算出するには効果測定が必要です。効果とは特定の目的をどれだけ達成したかという度合ですから「何を目的にした広告だったのか」という”目的語”を定めないと、測定すべき効果の指標が決まりません。
広告のROI算出の取り組みがうまくいかない原因の1つは、この最初のステップで「誰に対するどんな効果を測定すれば良いのか?」が明確にされていない事に起因します。広告計画を立てる際にゴールとターゲットは決められると思いますので、基本的にはそれに従えばよいのですが、ここではターゲット設定について特に重要なポイントを解説します。
まずは、ブランドにとって重要な消費者セグメントを定義し、そのターゲットセグメントにおけるROIを算出する事です。ブランドにとって重要なセグメントとは、市場全体に平均的にアプローチする場合に比べてより高い利益貢献や成長機会を望める消費者セグメントです。
ここでセグメントの優先順位を決めます。優先順位は図のセグメントナンバーで言うと、4>5>6です。この3つのセグメントのROIは算出するようにしましょう。
4は自社ブランドにとって最も重要なターゲットです。コミュニケーションの目的は満足度の維持と、ロイヤルティの更なる向上です。5のセグメントに対するコミュニケーションの目的は、積極責に競合からのブランドスイッチを誘発する事と、自社ブランドへの固定化(セグメント4へ成長させる事)、です。6のセグメントはチェリーピッカー、競合のロイヤルユーザー、自社が展開しているチャネル非接触ユーザーなどが含まれています。現在価値は低いものの、消費者プロファイリングにより自社が操作可能なドライバーが見つかれば、自社ブランドへ誘導する事も可能かもしれません。
上記の方法は細分化の軸を2つに固定してロイヤルユーザーを探す方法ですが、「そもそも市場をどういう軸で分けていけばロイヤルユーザーに辿り着くのか」というルールも学べる決定木という方法もあります。決定木で得られるルールは、セグメントにリーチして訴求する為の材料にもなるので、ターゲティングと同時に訴求戦略を立案する際に便利です。(参考:外部サイトへ)
ターゲットには、広告がコミュニケーションをとるべき中心的なセグメントであるコミュニケーションターゲットと、広告が直接メッセージを届ける相手ではないが製品を買ってくれる購買層であるビジネスターゲットがあります。ROI算出においても同様に、ターゲットに優先順位をつけて行う事が大切です。
ビジネスターゲットのROIも算出しますが、あくまでもコミュニケーションターゲットに対する費用対効果/投資対効果はどうなのか、が最重要の検討事項です。詳細な診断やROI改善施策を講じる際も、コミュニケーションターゲットのデータで行います。その為には、次に述べるデータ上でコミュニケーションターゲットを識別できる様にデータメイクする事が肝要になってきます。
広告のオリエンシートでターゲット像が描かれている事と、データ上でその像にあてはまるサンプルが識別できる事とは別です。ROI算出を行う時は専用のデータセットを作成するのですが、分析ではターゲットをデータ上で識別できる必要があります。
オリエンシートやクリエイティブブリーフには、ターゲットは「堅実派主婦」とか「トレンド先取り女子」の様なタイポロジーや定性的なイメージで書いてある事がありますが、これだけではデータの中の誰がそれにあてはまり、誰があてはまらないのかのか分かりません。広告を作るのに適したブリーフでも、必ずしもそれがROI算出に適しているとは限らないのです。
ターゲットがぼやけている場合は、ROI算出の段階で改めて上記の様なブランドにとって重要なターゲット、コミュニケーションターゲットを判別する関数をデータから作成できないか検討します。多くの場合、新しくデータを取得しなくても判別ロジックは作成可能です。例えば、
「ターゲットは一都三県在住の30,40代の主婦で、消費者アンケートの価値観項目のこの設問にこう回答していて、かつ消費実態項目のこの設問にこう回答しているサンプル」の様なロジックです。