マス4媒体のROI算出に取り組む時には、オンライン広告の効果測定の慣習から離れた視点を持つ必要があります。(全てではありませんが)インターネット広告は、出稿すれば効果が発生し、出稿を終えれば効果が速やかに停止します。つまり店頭プロモーションの様に「費用対効果」で見る事が多いです。それに対して従来型のオフライン広告の多くは「投資対効果」で見る事が求められます(*1)。
弊社でも「マス媒体の売上に対する費用対効果を出して欲しい」というオーダーを頂きます。もちろんマス媒体で短期的な売上増を狙っている場合、費用対効果も算出しますが、費用対効果だけでマス4やOOH媒体の効率性を評価すると過小評価になってしまう事があります。
そもそもTVCMや新聞などのマス4媒体は”広告”、つまり広く新製品を認知させたり、ブランドイメージや好感を形成したりという、市場創出の足がかりとなる土台を形成する事に優れたメディアです。また親近感や信頼感を強めたり、ターゲットの心理を語って製品特徴に共感してもらう事でブランドのレレバンスを強化したり、というロングテールの効果も持ちます。これらのコスト効率性は、短期的な売上や利益からだけで判断できるものではありません。
従ってマス媒体の適正なROI算出の為には、上記の様な効果が長期的な視点で見てどれ位の「投資対効果」がありそうなのか、という視点で考える事が大切です。売上予測モデルの作成や、DCF法(ディスカウントキャッシュフロー)などのエコノメトリックアプローチが必要になりますが、将来的なリターンも含めてROI算出する事が望まれます。
また、マス媒体は認知や好意形成など購買行動プロセスの上流~中流を担う役割を果たします。その部分をマス4やSP媒体がケアしなければ、中長期的には購買ファネルの途中脱落者が増えていきます。そうすると、プロセスのコンバージョンエンドである「購買」に辿り着く絶対数が減少し、結果として売上低下を招くかもしれません。
広告のROIを算出する頃には広告投下からある程度の時間が経過し、実際に売上が発生しています。そうなると広告主である企業側の興味は「現段階であがっているリターンに対して、広告はどうだったか?」という視点が強くなってしまいます。しかしROIを算出する際には、広告が作られた時点の当初の目的からブレない事が大事です。そうしないと適切なPDCAが回せません。その為には、
・現在までに構築されれきた、ブランド資産の様な累積的な投資対効果や遅延効果・残存効果の様な中長期的な投資対効果を踏まえたROIの立式を行う(詳細は3月下旬公開)
・媒体のリターンは「直接購買に結びついたか」という直接効果に加え、「他の広告媒体を介して、もしくは他の媒体と相乗して購買を喚起したか」という間接効果も含め、総合的なリターンを算出する(詳細は3月上旬公開)
というロジックを持ってROI算出に取り組む事が重要です。アクセス解析でコンバージョンしたかしないかがすぐ分かるインターネット広告のROIと同様に考えてはいけません。費用対効果に加えて、累積的な投資対効果の視点が求められます(詳細は3月下旬公開)。